デメトリアーデは死んだが

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 五人組に並ばせられて男達が歩かされている様子は後ろから見たら特に与える印象はない。しかし前から見たときの男達の顔はどれも苦々しそうでその苦々しさはちぐはぐでもある。  そのみすぼらしい男達の後ろを軍の帽子をかぶった多少偉い風体の男が続いていた。五人組の男の足並みに、たくらみを事前に察知しようというような視線を向けるのだが、時折吹く風がそれを邪魔する。あるいは意志の弱いだけだろうが、よく目をそらし、重たいコートの襟を引き伸ばすような身振りでつかんだ。子供のしぐさにも見える。  もう片方の手は細長い銃を握っている。子供がぬいぐるみを持っているのと変わらない。  この合わせて六人が歩く先は収容所であり、その施設に連れてこられた羊は「連れてこられた」という理由のみで屠殺される。寒さの中、灰色と茶色のシャツだけの男は(死ぬとしても)早くそこに着きたいのだろうと思われた。強く、そう思ったからか、彼は背の後ろで手を組んだ姿勢から走り出そうとした。  おい。銃を持った男は声をあげた。走り出そうとしていた男はびくっと止まり、列に戻って今の離脱をなかったことにしようとした。だが、だめだった。
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