おもちゃのピアノ

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 その日、雑用ばかりの部活も終わり、わたしとドス江はいつもどおり下校しようとしていた。さよならをいうと、先生はさっさと職員室にひっこんでいってしまうし、わたしとドス江は暗い校内にじゃっかん気を張って歩いた。わたしは幽霊を信じていなかった。けど、ドス江は幽霊を"意識"していた。何かにびくっとするみたいに急に後ろを向いたりするドス江をわたしは正直もてあましていた。  ふと、わたしたちは音楽室の前をとおりかかった。わたしは(ただでさえ時間が遅いので)そのまま歩き続けるつもりだったが、ドス江は立ち止まり「開いてる」といって引き戸を横にずらしてみせた。  部屋の中はまっ暗だった。ドス江は生き生きと(何せ彼女は幽霊を"意識"しているので)、部屋に入り、電気を点けた。 「だって誰かいるかもしれないじゃん。まあ、なんもないだろうけど!」といって、わたしを強い力で引っ張るドス江にわたしはつき合うことにした。言外に、わたしをあなどるような目をされたのが気にくわなかった、のも理由にあった。
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