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二〇二六年十二月
「手榴弾が爆発するまで最短で3.5秒かかる。これまでの訓練で解っていると思うが、早くに投げると敵兵に投げ返される」
「東防中第三小隊、位置につけ!」
山梨県の富士北麓に位置し、静岡県の東富士演習場に接している自衛隊北富士演習場にて、東都防衛学院中等部二年生による今年最後の合同演習である大行軍野営が行われていた。
紺の鉄帽を被り、戦闘に必要な食料と武器に見立てた重さ10キロの錘が入った背嚢を背負い、背丈の半分程あろう銃器を装備して、富士の裾野に広がる茶に濁った薄の草原を隊列を組んで歩いて来た東防中第三小隊に、休む間は与えられない。
東防中第三小隊に編成された一人、黒の長髪の遠藤チョウタロウの顔面からも多くの汗が滴り落ち、冬の軋むような寒さが、チョウタロウから体温を奪っていた。
その後ろ、一歩遅れて続く、装備に埋もれるような華奢な一三四ゼンジの吐いた息が、空気中で白く凍った。
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