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カズミはゼンジの隣に屈んで、ゼンジの顔を覗き込む。
「──ごめんね」
「──ごめんなさい」
カズミとゼンジは、同時に謝って、その声が微かに調和した。
ゼンジが首を傾げ、言う。
その色白の頬が、緊張で淡く紅潮している。
「謝られるようなこと、あったかな?」
「小狐……、私の所為で逃げちゃったでしょ」
「どうして、橘さんの所為なの?」
尋ねながら、ゼンジは色素の薄い色をした目を細めて、小狐が消えた薄野原を見遣った。
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