想恋～裏・宇治十帖～

深窓の姫君

「殿方からの文が多いのは結構だが、簡単に返事をしてはいけないよ。姫はしかるべき教育をうけ、しかるべき殿方の元に嫁ぐのだ。あの紫の上様のような貴婦人になるまで、迂闊に返事をして殿方の心をあおるような真似はなさらぬように」
　父は、殿方からの文が入った文箱をあけ、中を見ると、そうおっしゃりました。