いつも心にキミがいた

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この春、つまり今日からあたしは、無事短大一年生になる。 ついさっき電車を降り、今は短大へと続く住宅街の中の道を一人歩いている。 受験の時以来、この道を通るのは二度目。だからまだこの街並みを見るのは新鮮だな。 それにしても春になったとはいえ、朝はまだまだ肌寒い。 春風とは言い難い冷たい風に肩や背中の筋肉が強張ってしまう。 誰一人知ってる人がいない短大へ行くのは、人見知り症なあたしにとってはすごくドキドキすることだ。 まぁ、短大といっても、すごく小規模な学校で、学生の人数は二年生合わせても150人もいないんだけどね。 あたしが思い描いてた大学ライフとはほど遠いけど、受験勉強なんてしてなかったあたしが土壇場に進路変更して受かった学校なので十分満足してる。 親友の衣里と離ればなれになったのはすごく寂しいし心細いけど、同じ夢に向かって頑張ってると思えば大丈夫。 同じ夢…。 衣里は、夢を諦め妥協した進路を進んでいたあたしを軌道修正してくれた。 一緒に幼稚園の先生になろうって。 …衣里には、言葉で言い尽くせないくらい本当に感謝してる。衣里がいなかったら、今こうして短大に向かって………ううん、夢に向かって進んでいるあたしはいない。 この短大の存在を教えてくれたのも衣里だった。 『やっぱり美羽には後悔してほしくない』って、自分の勉強時間を削ってまで3月下旬からでも受験できる学校を調べてくれたんだよね。 あたしはいつも自分のことでいっぱいだったのに…。いっぱい迷惑かけたのに…。 本当にありがとう。 あたし、ここで頑張るよ。 駅から15分程歩き、ようやく学校の前に着いた。 門には桜の木々が並んでいて、あたしたち一年生を歓迎するかのように風に揺れ、花びらが舞っている。 その様子に見とれて微笑んだ後、風で少し乱れた髪を軽く整えた。 この前までずっとロングだった髪を思いきって顎までのボブにしたんだ。 心機一転頑張ろうって気持ちを込めて…。 大きく深呼吸し、衣里と誓った目標を胸に短大の門をくぐった。
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