いつも心にキミがいた

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教室に入ると、もう半数くらいの人は来ているみたいで賑わっていた。 …なんだか高校みたい。 それがあたしのこの学校に対しての第一印象だった。新学期のクラス替えがあったばかりの教室って感じだ。 輪の中に入る勇気はないので、とりあえず外の景色が見える窓側の空いている席に足を進めた。 「よろしく!」 椅子に手をかけたとき隣に座っていた女の子が笑顔で声をかけてくれた。 ショートカットのサバサバした感じの女の子。 「あ、よろしく。ここ空いてる?」 あたしも笑顔で返した。 …明るくていい人そう。 「うん、どうぞ。あたし、木嵜由実子。」 体ごとこちらに向きを変え、ニコッと笑って自己紹介してくれた。 「あ、あたしは佐倉美羽です。」 自己紹介なんて慣れてないから何か照れくさい。 「あはは。何で敬語なの。ね、何て呼んだらいい?美羽?美羽ちゃん?サクラちゃん?」 ドクン。 …サクラちゃん。 あの人の笑顔が頭に浮かんだ…。 ツーンと胸が痛みだした…。 「あ、じゃあ美羽か美羽ちゃんで。」 胸の痛みを、作り笑顔でごまかして答えた。 …やっぱりまだ、他の人にはサクラちゃんって呼ばれたくない。 「うーん、じゃあ美羽で。あたしは由実でも由実子でも好きなように呼んでね。」 あたしの内心には全く気づいてないみたいで、あたしを何て呼ぼうかちょっと悩んだそぶりを見せた後、ニコニコ笑っている。 「うん。由実よろしくね。」 入学早々いい人に出会ったかも。 早速話し相手が見つかってよかった。 「ここ空いてる?」 あたしと由実が話していると…正確に言えば人見知り症なあたしは由実に一方的に話しかけられてそれにあたふた返答しているんだけど…、誰かが声をかけてきた。 振り向くと、目がくりっとした人なつっこそうな笑顔をした男の子が立っていた。 「あ、うん。どうぞ。」 その人につられてあたしも笑顔になる。 その人は、あたしが座っている前の席に座ると、すぐにクルッと後ろに振り返ってまた笑顔で話しかけてきた。 「ね、もしかして二人同じ高校だったとか?」 へ? そんなに仲良さそうにみえたのかな?まだ出会って2、3分の仲なんだけど…。 「ううん。たった今友だちになったとこ。ね、美羽。」 由実に話を振られて慌てて笑顔で頷いた。
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