いつも心にキミがいた

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定刻が近づくと、先生らしき人が教室に入ってきて移動するよう指示が出た。 移動したところは小さな講堂みたいなところですでに何人もの職員らしき人が集まっていた。 新入生はきれいに並べられたパイプ椅子に学籍番号順に座った。奇遇なことに、トモくんとは隣になった。 …佐倉と佐多だから当然か。 そして、少し待ち時間があった後、さすが教育者を目指す学校だけあって、 入学式は10時きっかりに始まった。 壇上では何人もの見知らぬおじさんたち…来賓の方々が次々にお祝いのことばを並べている。 あたしたちのために、前々から挨拶の文面を考えて準備してくださったんだという多少の感謝の気持ちはある。 ……。 …分かってるんだけど。 …やっぱり退屈。 話を聞こうと努力はするものの、あたしの頭の中は努力むなしくどんどん入学式から遠のいていく。 最近考えることはいつも同じ。 あの人のこと…。 あたしのことをサクラちゃんって呼んでくれた唯一の人。 稔くん…。 結局何も伝えられないまま卒業して…。 最後に稔くんと話したのっていつだったっけ? 前はあんなに話せていたのにね。 自分で勝手に距離置いて、会話はもちろん挨拶も目を合わすこともできなくなった…。 いつだったか金子くんが公務員試験3人とも突破したよって教えてくれたっけ。 …金子くんもすごく心配してくれてた。ごめんね…。ありがとう。 …稔くん。 会いたいよ…。 まだこんなに好きなのに…。 「心機一転」の中には稔くんへの気持ちをふっ切ることが大部分をしめていたはずなのに、髪をばっさり切ったところであたしの気持ちは何も変わってはいなかった…。
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