疑惑の目

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 ふと前をみると、授業はいつも通りたんたんと進められていた。  そんななか、静かに授業の時間が流れるなかで、音を聞く。  音楽に詳しいわけじゃないけれど、聞くのは好きって人が大半だ。  そしてここに、日常の音が流れている。  先生の声。  黒板に赤のチョークで書く音。  ノートや教科書をめくる音。  シャーペンや鉛筆を走らせる音。  生徒の息遣い。  窓の外から聞こえる人工と自然が混じり合う、おと。  あらゆる日常の音が、抵抗もなく耳に入ってくる。  それを受け入れる自分がいた。  まだなんとなくだけど。  退屈極まりなかったものが、違ったものに見えだした。  その要因はひとえに、非日常をもたらす存在だろう、と。  彼女のほうに視線を動かす。  最近ではよく視るようになった如月。  先週は毎日きていた。  今も二葉さんの右隣にいる。  ちょうど黒板にカブらない位置なので、ノートが取りやすかった。  その相変わらずの白いモヤ。
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