疑惑の目

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 「俺も三十分後にミーティングだ」  「そっちもか。野球部は何話すんだ?」  「一週間の練習メニューが配られるんだ」  一人一人細かく、ではなくてだいたいのメニュー表らしい。  進学校でそこまで細かいことはできないと村上は言ったけど、それでもやってるほうなんじゃないかと思った。  「大会近いしな」  そろそろ地区大会らしい。  詳しくは知らないが、甲子園の予選の予選ってとこか。  「バスケは………あれだったみたいだけど、そっちはどうなんだ?」  しょうが焼きをつまみながら訊いてみる。  一方村上は梅干しを食べていた。  「上手い先輩はいるんだけど………まあ、どうなんだろうな」  こちらも厳しいと。  黙々と食べる村上に、「そっちもがんばれよ」ぐらいしか言えなかった。  そのあとは昼飯を食べながら他愛もない話をした。  昨日見たテレビだの、クラスメイトのこと、陽介のことなど。  外は雲に覆われて太陽を隠していたけど、俺はそれに近い心境だった。
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