目がゆく

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 高く、高く……。  小学生の力でこんなに飛ばせるのかとおもうくらい、高く。  たしかに、こっちにフライがきたら取る、という自信はあった。  「……取れねぇよ」  ボールは頭の上を越えていった。  ホームランだ。  と同時に歓声がわく。  サヨナラ負け。  首を戻すと、中山のチームのほとんどが肩を落としていた。  でも、中山自身、そうもしてられない。  ボールを取りにいかなきゃいけないからだ。  「めんどくせぇ」  勝ったチームが取りにいきゃいいのに、と中山は思った。  仕方なくボールが消えただろう草むらに入る。  土手(どて)の河川敷をグラウンドとしてつかっているので、それ以外は草むらが残ったままだ。  分け入って、なおかつ姿勢を斜めにして懸命に捜す。  「あった……」  小さなゴミも落ちてるが、すぐに見つけることができた。  「よかった」
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