疑惑の目

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 少しくらいは反応を見せてもいいと思うんだけど。  何も喋らないし。  二葉さんは、フェンスの向こう側を見つめたままだった。  俺も二葉さんの見てる方に目を向けた。  曇った空の下に住宅街が広がり、山というか丘があるだけ。  風景画の対象にすらならなさそうだ。  というのも、こっちは裏門側で何もないからだ。  いつも俺が定位置に座るところは正門側で、グラウンドがある。  また、商店街があり、駅があり、といろいろ揃ってもいる。  北と南とでは、景色も人の往来も違う。  なのにどうして二葉さんはこっちを見ているんだろう。  これといって注目するものは何もないんだけど。  「……………………」  なおも無言は続く。  聞こえるのは、近くのベンチに座っている生徒たちの声。  テレビの内容について話してる。  特に興味がなかったので、耳に入らなかった。  そんなふうに流しながら、持っていたパンを開けて食べる。
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