疑惑の目

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 この屋上からは様々な声が聞こえるので、無言のまま佇んでいると変に見えるかもしれない。  でも気にならなかった。  こんな空気が提供されることなんて、ないんじゃないか?  学校という場所なら、対面したら何か話すのが普通だと思う。  知らない人同士でも、何か話なくちゃ、とおもうだろう。  それが、俺と二葉さんにはなかった。  現にいま、それはない。  会話が全く必要ないわけじゃない。  必要なときに、必要なだけであって。  不必要なときは、一切喋らなくても苦にならない。  たとえ友達関係でも、滅多に受け入れられないとおもう。  それなのに二葉さんと話し始めた時から、それが普通となっていた。  受け入れる、受け入れないとかじゃなくて。  当たり前。  そんな言葉がぴったりだった。  「あんまり見つめられるとイヤなんだけど。それでなくともイヤなんだけど」  「ああ、悪い。……いや、一言余計だろ」
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