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「そろそろこっちに出て来いよ、水竜!」
雷を打ち放ったのは、岸辺に一人佇む、黒衣を身に纏った男性。
跳ねたツンツンの金髪に、程よく筋肉が付いた精悍な身体。
顔は、色素の薄い切れ長の蒼い瞳に、鋭い眼差し。
精悍でそこそこ整った顔起ちをしている。
また、左手では印を結び、右手には刀身が漆黒の刀が握られている。
どうやら、レイジングフレジアスとある程度刃を交えてからというもの、あの水竜は一向に水辺からこちらに近寄って来ないようだ。
そのため、水場の魔物に有効な雷の魔法で、攻撃を兼ねて挑発しているらしい。
しかし当然、一方の水竜も、自分に有利な水辺から離れれば間違いなくこの男に狩られる事が分かっている。
だからある程度近接で戦った後に後ろに退いたのだ。
如何に雷に打たれようと、近寄ろうとはしない。
「チッ。
だーいぶ賢くなってやがんな………。
あぶり出せねぇみたいだし、もう片付けちまうか。」
それからしばらく、牽制程度の雷魔法を飛ばし続けたが、レイジングフレジアスは応じる様子を見せない。
男はそろそろ片付けることを考え、右手の刀に左手を添え、目を閉じる。
『邪なる力を宿せし妖刀、深淵。
我が魔力を糧に、目前の敵を蹴散らせ。』
刀が一つ波打ったかの様に見えた次の瞬間、漆黒の刀に強力な雷が宿された。
そう、この男は俗に言う魔法剣士。
剣術と魔法とを扱う、戦士である。
そして、レイジングフレジアスはあることを見誤っていた。
この男には、如何に間合いを取っても、魔法で十二分に自分を仕留められる力量を持っているということを。
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