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"魔導剣術・雷撃斬"
バチバチと放電を続ける刀を男は構えると、こちらに向かってあぎとを開いて威嚇してくる水竜を睨む。
「悪いな。
仕事なんだ。」
次の瞬間、閃きしか視認出来ない、神速と形容するに相応しい速さで刀が振るわれた。
それと同時に辺りを走り抜ける凄まじい雷撃。
放たれた雷は、辺り一帯を容赦無く打ち壊し、それはレイジングフレジアスも例に漏れない。
『ギャオォオオォオォオ!!』
肉が焼ける、不快な臭いが辺りに充満する。
強烈な雷は憐れな水竜を容赦無く打ち据え、焼き、その命を無情に奪い去った。
雷が消えた後、ただの物言わぬ骸となった水竜は、凄まじい水音をたてながら水面にその身を横たわらせ、暗い水底に沈んで行った。
「さーて、討伐完了!
あー……あんな底に行っちまったら何も剥ぎ取れねぇな……。
まぁ、報酬金があるし大丈夫か。」
男は、水竜が沈んで行ったのを確認すると、何やら少し不満そうな表情を浮かべた後、刀の手入れを軽く行う。
この男の名は、フラウディオ・ラインハルト。
通称、フラウ。
魔導国家フィニートに所属している、魔法剣士である。
そして、民の凶暴な魔物の討伐依頼や、護衛依頼などを受けて生活をしている、"ガードナー"と言われる人間の一人だ。
フラウは汗を軽く拭うと、水底に沈んだ水竜に左手を翳す。
やがて、水竜の中から何かが飛び出し、フラウの手に納まる。
それは翡翠色に煌めく、鉱石の様なものだった。
「さ、引き上げますか。」
彼はそれを懐に仕舞うと、早々にその場を立ち去る。
辺りには一応、大量の魔物がいる。
長居は避けた方がいいのだ。
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