春霞に見えた景色

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五枚ある内の一枚に写っている武士らしき人は楽坐ではなく、立っている。 右手には鍬(くわ)らしき物、左手にはよく分からない棒のような物が握られていた。 二枚目の絵には真面目に楽坐の姿勢をした武士が写っているが… 何故か左手は人差し指を伸ばし、親指を立てて矢印のようなかたちを示していた。 その指差す先には点が三つ。 三枚目の絵は同じく楽坐の姿勢ではあるが、全身を黒い布で覆ったような怪しげな人がいる。 これじゃあ顔は分からない。 四枚目は絵自体がボロボロで、コピーされていても何がなんだかさっぱりだ。 五枚目の肖像画は一枚目と同じく、何か棒のような物を持っているが…どこか変。 これは木に見えない。 槍?いや、違うだろう。 弓でも矢でもない。 (どれも見たことねぇな…偽造か?) 「先生!これ…本物ですか?」 「もちろん!今朝のニュースで"新たに見つかった謎の絵!"っていう特集がされていたんだ!しかも発掘された場所はこの土地、座間!」 「うっそだろぉ!?ここめっちゃ田舎じゃん!」 とある男子がそう驚くと、皆も、うんうんと頷いた。 「先生!つまりこの土地には城があったってこと!?」 「そうかもしれん!俺はそう信じている!歴史上ではそんなこと一切記されていないがな」 座間なんて田舎な方だ。 全てが田圃じゃないけど、東京にあるような大きなビルも無ければゲームセンターも無い。 龍斗が住んでいる桜田という場所は元々沼だった場所で、今も辺りは一面が田圃である。 通っている高校はそこからすぐそこだから通学に不便は無いが、遊び盛りな彼にとってはつまらない土地だった。 でも地元だから離れる気はない。 なんだかんだで自然の環境は良いのだ。 家の近くには湧き水や沢山の小さな遺跡がある。 ーーー……そんな場所に、城?武家屋敷が? 「ありえねーって。センセ、座間の歴史は昔、課題で調べたことあっけどそんな話しはどこにも無い。 つーか村自体もそこまで栄えていなかったし。くだらねぇこと言うなよ」 バンッ!と龍斗は机を大きく音立てて、盛り上がる空気をぶち壊しにしてしまった。
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