37人が本棚に入れています
本棚に追加
ちょっと昔、この公園で違う地区の奴等と大喧嘩になった時に使ったバット。
無くしたと思ったらここにあった。
「マジっすか!これ、さっき草むらのところにあったんで拾って使ってたんですよ!すみませんでした!」
「いいって。………あ」
ピーーーー
センスの無い着信音が突然に流れたので、学ランのポケットからiPhoneを取り出した。
表示には
母さん
と、ある。
「あー?もしもし?なに?」
『ごめんね、今日ご飯早く作っちゃったのよ!急いで帰って来れる?』
「………………おう。わかった」
ーーーーーーーーー
「………ってことだ。じゃあな」
「え~…。また今度やりましょうね!絶対ですよ!」
手を振り、別れを告げると田圃沿いを自転車で走る。
家まであと十分もかからない。
「今日の社会…なんなんだろ…」
頭に五枚の絵を思い浮かべる。
(あの黒い点は何を示している…?鉄砲?変な棒は何だ?それに奇妙な服装…)
誰もいないから、声に出した。
「もしかしたら全部嘘で…
もしかしたら全部未来の物かもな…」
すると。
急な眩暈に襲われ、家まであとちょっとのところで視界がグラリと傾いた。
まるで目の中に紙切れが入ったかのようにシャッシャと前を遮られ、槍の如く光が射し込む。
「う、わ…ぁ…」
自転車を支える両手がひどく痙攣し、握っていた指の力が弱まった。
もう一度、踏ん張って瞼を大きく開くと…
そこには移り変わる景色があった。
目の前で、建物が消えていく。
目の前で、森が増えていく。
目の前で、辿ってきた道が沼になっていく。
目の前で…
時代が変わっていく。
最初のコメントを投稿しよう!