初めっからピンチでクライマックス

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 加えての悪天候。シャツが雨を吸って地味に重たいし、雨が目に入ったりすればそれはもう最悪。 「恨まないでねぇ~」 「クッ。……恨まれたくないんなら、その槍を下げてくれないか?」 「無理だねぇ~。だって見られちゃったし」  そりゃそうだろうな。あまり現状を理解は出来てないが、殺人(未遂)現場を見られちゃ、目撃者も排除する以外はないもんなぁ。  俺が逆の立場でもそうするだろう。……だから、精一杯抵抗させてもらうんだけどよ。  一撃だ、一撃だけ避けて逃げる。この危険な女性から逃げだし、後ろの少女を抱えて病院に行ければ俺の勝ち。  なんて考えてるが……言うは易し、行うは難しってヤツだ。  小さく構える。祖父や父親から教えられ、叩き込まれた古流武術の型。 「行っくよぉ~」  やはり気と間の抜けた声を出して、丁寧にも俺に攻撃宣言。  ぐぐぐと、弦一杯まで引き絞られた弓のように、身体──主に足、腕、腰に力を溜める女性。  その身に籠められた力は、今か今かと叫ぶように言を上げている。 「そ~れぇ~」  地を駆け出し、必殺と呼べる槍の突きを俺に繰り出そうと動く。  ──農民、三間半の槍持ちゃ武士をも殺す。  不意に、そんな言葉を思い出した。
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