初めっからピンチでクライマックス

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 まあ所謂、剣道三段倍。自身の得物よりリーチのある武器を持った者に勝つには、三倍上の実力と技術が無ければ勝てない。  だから農民でも、刀の三倍ほどの長さもある槍を持てば、余程の差が無ければ武士にも勝てるって説話だ。  ……慌てるな、俺は勝つ気で対峙している訳ではないのだ。  槍の穂先が眼前にまで迫る。  っのぉ、いきなり頭から狙いますかコンチクショウ。  首を横に逸らすだけで避け、両手でリーチのある長い槍の柄を掴むと下に降ろして足で押さえた。 「およよ~?」  自分の一撃に反応し、避けるならまだしも、一手を封じられるとは思いもしなかっただろう。目をパチクリさせ、槍と俺の足を何度も交互に見る。 「おやぁ、結構お強いんですねー? ビックリー」 「アンタ、余裕だな」 「ええ~。だって槍を押さえた程度じゃ、私やられませんしぃ~」  にへら~とした笑顔。底の窺えない表情に、怪訝な顔をした刹那、頬からドロッとした液体が濡れ落ちた。  最初は雨かと思った、だが雨にしては妙に粘着性があると感じ、直に頬を触って確認をすると、それは血だった。  驚嘆と畏怖の瞳で女性を見るが、さっきとは変わらない笑顔で俺を見ていた。  なんだ一体、俺に何をした? 彼女の両手は槍を持って塞がれている、両足だって動かした気配が無い。……とすれば、何をしたんだ?
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