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我ながらもっとまともな答えはなかったのかと後で後悔するアリエス。
だが、クラッドはそのようなこと気にせずに軽く顎に手を当てて考え込むように黙る。
およそ五秒程で、顎から手を下げ、クラッドはアリエスに言葉を向ける。
「アリエス。ちょうどいい、貴様も手伝え」
「は?」
「先日ジュエル山へ向けた調査部隊との連絡が途絶えてな。これから私一人で調査しようと思っていたのだ」
「じゃお前一人で行けよ」
「神様の退屈そうな後ろ姿が見えたのでな。遊んでやろうと思ってな」
「余計なお世話すぎんだろ!」
「いいから来い」
「おい、無視かよ!神様無視してんじゃねぇぞ!」
などと声を高らかにして叫ぶも、クラッドは聞かずに歩き出す。
とはいえ、ここで無視してしまえば負けたような気になる。とアリエスはムキになりクラッドの横に並んだ。
「まぁどうせ俺も山に行く予定だったし」
「ならば好都合だな」
「くっそー、こんな時だけ反応しやがって」
「いいから聞け。貴様の話はそのうち聞いてやる」
「話なんかねぇよ…」
大きなため息をつきつつも、アリエスはクラッドとの関わり方を少しずつ学び始めていた。
「で?何のために調査部隊なんざ派遣してたんだよ?」
「科学部隊から山の麓から莫大な魔力量が感知されていてな。あまりにも強大な量だったため調査部隊を派遣したのだが、先日連絡が完全に途絶えてな」
「莫大な魔力量?そんなの感じねぇけど」
「うむ。一時的なものだ。今はまるで魔力量を検出されてはいない」
「なんだそりゃ?」
「だからその調査を私とお前でするのだ」
「何で俺もやるんだよ!?」
「神ならば人のために働け」
「くっそこいつ神様見下して命令してんぞ…何だと思ってんだ…」
普段から神だの何だのと言われることを嫌うアリエスだが、この瞬間だけは神様として自分を崇めろとすら思っていた。
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