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「ったく、めんどくせぇな…」
小さく息を漏らしながら呟くアリエスだが、彼にも思うところがあった。
覇王襲撃から一年。冥界が動いていてもおかしくはない。
『神の奏者』を手に入れたことから冥王の目論見は大方片付いたと見ていいだろう。
だが、覇王と霊王の二人の意向は何一つつかめていない。
覇王レイティアは聖人の帝を敵対視していた男だ。
現に一年前は真っ先にアリエスを襲撃に来たあたり、おそらくまだ聖神の帝との戦いを諦めてはいないだろう。
アリエス自身もそう思っていたからこそ一年の期間を修行に当てていた。
だからこそ、莫大な魔力などと聞いてしまえば冥界三王を真っ先に思い浮かべてしまう。
「何もなければいい。が、冥界と関わりがある可能性もある」
「その場合お前はどうすんだよ?お前も冥界の者だろうが」
クラッドは冥界からリオズレインに訪れ、シアノス諸国で暮らしているに過ぎない。
現在も冥界と連絡を取り合っている以上、この星のために動くとは思い難い。
しかし、クラッドは迷わずに答えた。
「星等関係ない。姫様に害が及ぶのであればこれを殲滅する。それが私の仕事だ」
クラッドの言葉にアリエスは驚きを隠せなかった。
仕事柄突き従ってるだけと思っていたが、ここまでの忠誠心があるとは予想していなかった。
「驚きか?私があのような少女に執着していることが」
「あぁ、正直ね」
「確かに私は冥界の者だ。だが、私はあることをしてしまい冥界を追放された身でな」
「追放?お前が?」
真面目そうなクラッドが追放などと、何ともそぐわないものだとアリエスは思う。
そんなこと何度も言われて来たであろうクラッドは気にかけることなく言葉を続ける。
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