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「リオズレインにて居場所を探し求めていた私を拾ってくれたのはアリス・アンダート王女だった。どこの馬の骨とも知れぬ私を身近に置き、常に言葉をかけてくださった。あの日のことは、生涯忘れぬであろう」
遠くを見据え、思いだすように呟くクラッド。
その横顔はあまりにも優しく、どこまでも真っすぐだった。
彼女が、アリスがいたからこそ自分はこの世界で生きている。
その恩を、一生かけて返そうとクラッドは誓った。
「例え、冥界全てを敵に回そうとも私はあの方を守る。この命尽きるまでな」
「はは」
強く言い放ったクラッドの言葉に、アリエスは小さく笑った。
その反応に、クラッドは鋭い視線を向ける。
「何がおかしい」
「いやいや、悪い。お前、思ってたより熱い奴だなって思ってさ。もっと冷めた奴かと思ってたけど」
「ご期待に添えず悪かったな」
「んーなことねぇぞ?俺は、お前みてぇに熱い奴のが好きだけどな。周りなんて何も関係ない、己の道を突き進む。いいじゃねぇか、男に生まれたからには己の道を突き進まなければ嘘だ。お前はそのまま真っすぐ走れよ」
冥界から追放されても、この未知の世界で生きてくクラッド。
己が身を救ってくれた王女を一生かけて守ると誓った生涯。
その生き方はもはやクラッドの存在理由でもあり、生きる理由だろう。
「余計な世話だ。言われずとも俺は姫のために生涯を捧げると誓っている」
「なら結構だ。んで?山の麓派あそこでいいのか?」
と、視線を前に向けるアリエス。
そこにあったのは雪山に覆われた山と、除雪された山道、そしてキャンプ可能な山小屋だけだ。
「あぁ。計測地点は麓付近としか出ていない。それ以上の正確な位置は魔力か強大過ぎて計測不可能だったようでな」
「まぁでかすぎる魔力量だと計測器がふりきれっからな」
魔力を持たないアリエスには分からないが、その程度は常識として知識にある。
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