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「そうだ、さっきの奴が持って行った物を知ってる様子だったよな?」
アリエスは思い出したようにシャノンに尋ねる。
「あん?あぁ、『72柱』の奴のことか。あいつが持っていたのは魔力の貯蔵器だよ」
「魔力の貯蔵器?そんなこと出来る物があるのか?」
眉をひそめて聞き返したのはクラッド・アークだった。
現状魔力を圧縮できるのは生命の身体のみとなっている。
本来魔力とは生命力と同義となるため、命なき物質に宿ることは理論上ありえない。
そのため、このシャノンの言葉はアリエスにもクラッドにも納得しにくい内容だった。
「クラッド、おめぇが知らんのも無理はねぇよ。何せ冥界の最新技術だからな。奴らは大量の魔力を集めている」
「何で?」
アリエスが尋ねると、シャノンは一息区切ってから答える。
「最後の『72柱』を目覚めさせるため、だそうだ」
「最後の?『72柱』ってのはまだ全員いねぇってことか?」
「71体は存在しているらしいがな。最後の一体がまだ間に合っていないらしい」
膨大な魔力を擁して生み出される『72柱』。
それが一体でも増えるのは厄介極まりない。
「ってことはさっきのべリスって奴はここでその魔力集めをしてたってわけか」
膨大な魔力量がべリスと共に消失したことから、それが伺えるだろう。
だが、べリスの力自体も強大なものだった。
今回はアリエスが圧倒することが出来たが、全ての『72柱』をアリエスが相手出来るとは限らない。
いや、そもそも全員に勝ちうる確証などゼロだ。
「とりあえず、今の俺らに出来るのはディアナを味方にすることだけだ」
シャノンが区切るように話を変える。
いつまでもすぐに動かせない話題を引きずっていても仕方がない。
今出来ることに最善を尽くす。アリエスたちに出来るのはそれだけだ。
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