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「いえ、今年の冬も寒いなと思いましてね」
「エルナンド公国は四季が一番はっきりしている国ですからね。しかし北部の国はもっと寒いですよ」
ハルキの言葉に微笑んで答える美青年、リオレス・シュヴァリエ。
エルナンド公国の二枚看板として『殲滅の龍騎士』の二つ名を持つリオズレイン最強の騎士でもある。
「リオレスさん」
「はい?」
「アリエスさんは…大丈夫でしょうか…」
ハルキの言葉に、リオレスは小さく息を吐いた。
「霊獣の力を完全にモノにするのは難しいでしょうね。先代の『聖神の帝』シオンですら三体目が限界な上、完璧に扱うことは出来なかった」
千年前にリオズレインと冥界の戦争に参加していたリオレス・シュヴァリエ。
『神の奏者』アリアを守るために戦っていた記憶は今でも鮮明に呼び戻せる。
中でも守護者のリーダーでもあった『聖神の帝』シオンはリオレスにとってかけがえのない友人だった。
彼が果たせなかった夢を、誓いを果たすためにも今代の『神の奏者』レイア・オーフィクスを救いだす。
彼の頭にはそれしかなかった。
「一年が経過しましたけど、アリエスさんは未だに出て来ませんね…」
「雲雀の結界魔法を使って修行とは面白いことを考えますが、確かに一年も音沙汰ないといささか心配にはなりますね」
エルナンド公国のもう一枚の看板、『空間の支配者』玖爛雲雀(くらん ひばり)。
彼女の魔法『結界魔法』は外界から全てをシャットダウンし、術者の想像した世界を生み出す魔法だ。
二代目『聖神の帝』アリエス・シュタイナーが求めたのは、『霊獣の力でも破壊されず、時間など気にせずに修行出来る場所』だった。
しかし、そのような場所がこの世界にあるはずもなく、結果行きついたのは玖爛雲雀の生み出す自由世界ということだった。
と、二人がアリエスのことを思い浮かべていた時、リオレスの携帯電話が音を奏でた。
「はい?」
『あー、リオレス?私だけど』
電話の向こうからは玖爛雲雀の声が聞こえる。
「雲雀?どうしました?」
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