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「すまない、唯…。最近耳が遠いのかよく聞こえなくてな…。もう一度言ってくれるか…?」
「だから、私TACTOと結婚するの!」
どこかの女優が記者会見でやるように、左手に輝くシルバーリングを嬉しいそうに私に見せる我が愛しき妹、唯。
待て、落ち着くんだ、冷静になれ私。
「ゆ、唯、あの」
「ありがとう!」
唯はにっこり笑う。
まだ何も言ってないのだが…。にしても可愛い過ぎるぞ畜生…。だが、可愛い妹の為だ。ここは心を鬼にしなければ…。
「唯」
「何?ユウ姉?」
「あのな、唯。相手はどういう立場の人間か分かっているのか?相手はミリオンセラーを連発してテレビから引っ張りだこで、海外のメディアからの注目も高い。結婚したとしても、今でも中々会えないだろう?
「うん…。でも、好きだから…」
唯は頬をピンクに染めながらそう呟く。
ダメだ。完全に脳内ピンクだ。仕方ない。可哀想だが、この馬鹿には現実と世間の厳しさを教えなくては…
「唯、TACTOを好きなのはお前だけじゃない。大勢のファンのがいる。その中でただ一人の女、つまりお前だけ奴と付き合うと言うことは、どういうことか分かっているのか?」
「それは…」
唯は目を逸らして俯いた。
「お前はファンの奴等から憎まれる存在になる。中には何をしでかすかわからん奴もいる。お前の婚約者はそんな危険からお前だけを護ってくれるという絶対的な保障があるのか?あの多忙の中でお前だけを自分より大切にしてくれる程の器量があるのか?」
「もう!何よ!ユウ姉は私の幸せを一番に考えてるって言ったじゃない!なのに何でそんなこと言うの!?」
「だからだ。この際だからはっきり言っておくが、私は断固反対だ」
「もういい!ユウ姉なんて大っ嫌い!!」
そう叫んで唯は泣きながら座敷を出ていった。
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