Epi.1

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「あっちぃぃいっ  あっつぃよぉぉ」 「喚かれるとサラに暑くなるダロウが」 蓮が喚く雅の頭を叩く その蓮の服は真っ黒 この地方独特の 容赦ない日差しの熱を 効率よく吸収しているはず 俺らが今居るのは 大陸の熱帯地方の国で 国土の殆どが砂漠化してしまっている その国の中心街、 "Antares"に向かう途中なわけで 「なんで蓮は暑くないのぉ…っ」 「オレは氷のチカラを上手く使ってるカラ」 雅はパタパタと 扇子で自分の顔に風を送っている 「カズ、暑くないか?」 愛用する紺色のフードコートの フードですっぽり頭を隠した彼は コクンと頷きを返すだけ 「そのコートって涼しくなんの?」 雅がカズのコートの袖を 指で摘まみながら話すが カズは反応すらしない 「んー…、まだダメかぁ」 「仕方ねェダロ」 あの城で捕らわれていた間に その身体に受けた仕打ちのせいか 一切心を閉ざしてしまったカズ しばらく 声すらも聞いていない 「ね、陽ちゃん  雨取り返すなんて  どやってやんの?」 「まずは依頼主に会って  現状を確かめて、それから策を練る」 雅は扇子で扇ぎながら "ふぅん"と返事を返す 「ドコで会う予定なんだヨ?」 「"Antares"にあるカジノの前」 「カジノあんのかヨ」 「結構でかいらしいよ」 だから目印にもなるんだろう 「とりあえず街に着いたら  酒屋に行こうか」 「お酒呑むのっ?」 「バカ、水飲むんダロウが」 「水分はしっかり摂らないと」 「あっ、なるほど」 きっとこの国じゃ 水はかなり貴重な代物 手に入る場所は限られてくる 「ね、なんかスゴイのあるよっ」 雅が指差す方に 蜃気楼に揺らめく豪華な建物 「もう少しだね」 .
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