Epi.1

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――A. 「つまり、その街に  雨を奪われたと?」 陽ちゃんみたいな 紅い髪をした女の人は コクンとうなずく 服装としてはアジアンテイスト 踊り子って感じ さすがは砂漠の国 「数年前に呪術師が  その街に現れてから  雨は年々減り、ついには  全く降らなくなってしまい…」 「オイオイ、減ってイッテル時点で  ソイツを追い出そうトカ  思わなかったワケ?」 蓮が言うことはごもっとも だって明らかに そのじゅじゅつしが犯人でしょ 「街に行けば、  理由がわかります…」 「追い出せない理由が、  で御座いますか?」 陽ちゃんの問い掛けに 女の人はゆっくりうなずいた スコル、さんだっけ?名前 「ダッタラ行って見たホウが早い」 「確かにその方が  効率が良いでしょう」 「じゃぁ引き受けてくれるんですか?」 スコルさんは 蒼いくりっとした瞳を輝かせる ここに来た時点で 依頼は引き受けてるんだけどね 何気無くイチの頭を フードの上から撫でる 反応はないけど 明らかな拒絶もない 「イチ…」 ポツリと無意識に声に出てた 「早速その街に案内して頂けますか?」 「わかりました  皆さんの格好で  砂漠を歩くのは危険ですから…」 スコルさんは 部屋のクローゼットから 丈の長いフードコートを4着、引っ張り出す 「これを着て、  あと十分な食糧と水分と…」 「ご心配無用で御座いますよ」 「え?」 「方角サエ解れば飛んでイケル」 蓮と僕が居れば 移動には困ることはまずない 陽ちゃんもイチも それぞれに移動手段はある 「でも途中には幅50キロの河も…」 「さぁ、方角はどちらでしょう?」 陽ちゃんは 黒縁の眼鏡をくいっと 上げながらスコルさんに聞く 「ここから真っ直ぐ南です…」 「真っ直ぐ南ダナ」 蓮がすくっと立ち上がって 黒いコートを着直す 陽ちゃんも立ち上がる 僕もつられて立ち上がって イチをたたせる 「では参りましょうか」 宿の部屋から出ようとした時 スコルさんが呼び止めた 「アタシも、行きます」 力強く光る蒼い瞳は まるで蒼ちゃんのそれだった .
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