Epi.1

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「…ありえない…」 スコルさんが呟いた 蓮と陽ちゃんの背中を 呆然と見つめながら 「あの二人は凄いんだよ?」 彼らの足元に横たわるのは 砂漠の魔物らしいんだけど 完全に仕留められてる 「だってあの魔物は  何人も旅人が餌食になってるのに…」 ワニをでっかくしたようなその魔物 「オレが仕留めたンダヨ」 「は?俺が止め刺したんだよ」 言い合いながら また目的地に向かって歩き出す 僕らもその後を追いかける 「あの二人は何者なんですか?」 「二人はね、"化物"なんだ  二人だけじゃない  僕ら4人、うぅん、5人みんな"化物"」 だからこそ 深い深い傷を抱えてる 癒されない闇を抱えて生きてる 「オイ、これか?  例の河ってヤツは」 蓮の声に前を見直せば 目の前に広がる海 「え?かわ?これが?」 「向こう岸は見えませんね」 「ここを渡ったすぐに  目的地、"Shaura(シャウラ)"があります」 向こう岸が見えないんだから その向こうにある街は 見えるはずもない 「陽翔、血ィ寄越せ」 「今このタイミングで?」 「るせェ  黙って差し出せ」 陽ちゃんの腕を取って そのまま手首に噛みつく蓮 僕らは見慣れちゃった光景 でもスコルさんには また信じられない光景で 「っそサン」 "食事"が終わった蓮は 河に手を入れる 「この河には人喰いナマズが…」 ザバンと音を立てて バカでかい魚が 岸にいる僕らに口を開けて 飛び掛かってくる でも誰も身構えたりはしない 「逃げなきゃ!!  何やってるんですか!!」 スコルさんは慌てふためく 「大丈夫だよ?」 ――パキパキパキパキィ…ン…!!― 「―!!?」 河が凍り付いていく 飛び出した魚も一緒に 「うし  コレで渡れるゼ」 蓮はまだ氷がまとわりついた手で 綺麗な黒い髪をかき上げる 「かっこいい…」 スコルさんが呟く そだよ、蓮はすんごくかっこいいんだよ 「サッサと渡っちまおうゼ」 .
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