Epi.1

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――S. 一面凍り付いた河を 全速力で駆け抜けていく 蓮の"術"のせいで 頭痛と倦怠感が酷いが 表には出さない 「陽ちゃん?」 風を纏って カズを背負いながら 駆ける雅がスッと 俺の真横に来て顔を覗き込んできて 「蓮っ、陽ちゃn「余計な事は  言わなくていい」…でも…」 これは俺が弱く 蓮の魔力が強大過ぎるせい つまりは どうしようもない 「いいから」 そのまま氷の河を走り抜け 反対側の岸へと辿り着いた時には すっかり日は落ちていた 「ココが例の街カ?」 「雨どしゃ降りじゃんかっ」 砂漠地帯とは思えない程の 雨の降り方は遠くから見ても そこに雨が降っているとわかる程で 呆気なくずぶ濡れになった俺達 「コリャ雨を奪わレタと言っても  おかしくはねェナ?」 「そして、その元凶の呪術師は…」 「キャァァアッ!!!」 『――!!?』 スコルさんの声を遮るように 何処からか響いた甲高い悲鳴 そして声の方から 走ってくる数人組 「…賊カ?」 「おそらく」 蓮と二人でそいつ等を 迎え討とうと 道を塞ぐように構える 「どけぇぇえっ!!!」 よく見る砂漠の盗賊の様な そいつ等が手に抱えている鞄 おそらく声の主から 引ったくったのだろう 「蓮」 「あァ、任せる」 コートの袖を捲り前を開けて 眼鏡を上げ直し 盗賊数人と向き合う 「貴様も死にてぇのか!!」 「ッサーベル…!!  危険です!!逃げてください!!」 幅広の刃が特徴の異国の刀 領さんの物とはまるで違う 「怪我をしたくなければ  大人しく投降なさい」 あまり派手には暴れたくない 「誰が降参などするかぁあ!!」 「やっちまぇえ!!!」 サーベルを手に 上や正面、左右から迫るそいつ等を 返り討ちにしようと身構えた途端 「うぉわぁあっ!!」 「あちゃちゃちゃっ」 そいつ等を包み込んだ炎の渦 「陽翔!?」 「俺じゃないッ」 「何この炎…っ  気持ち悪いよッ…」 まるで生きているかのように 盗賊すべてを突然飲み込んだ炎は 焼き付くしたのかスッと消えていく 「まだこんなくだらん真似をするか…」 雨が上がり響いた 地を這うような声 「フレア様ッ!!」 「フレア様がまた街をお救いにっ」 いつの間にやら 集まっていたギャラリー達が 次々に"フレア"という名を口にする 「フレア…ッ…」 スコルさんが歯を食い縛って 屋根の上にいるその人物を睨む …なるほど、合点がいった .
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