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「笑いたくもなるさ。 親父との商談だって? なら諦めた方がいい、アイツは俺なんかのために大事な商談にケチをつけるような奴じゃない。 倉太刀家の為なら喜んで俺を差し出すような人だからな」
こいつらは親父のことを何も知らない。
あの人にとって大切なのは俺ではなく、倉太刀の名前なのだ。
「ああ? てめえ何が言いてえんだ!?」
シビレを切らしはじめたスキンヘッドの男が、今にもその両手を伸ばし掴みかかろうとしてきた。
だが俺は直ぐ様ベンチから立ち上がると、手のひらを広げスキンヘッドの男の顔の前に素早く突き付けた。
「なっ!?」
男の動きが鈍る。
人間とは不思議なもので、ある一定の速さで視界に物を広げると、自分の意識せぬうちに勝手に反応してしまい、動きが止まってしまう事がある。
動体視力の誤差動、無意識のブレーキみたいなものだ。
「あんたらこそいいのか? ここは一応進学校の指定通学通路だぜ? 周りも閑静な住宅街に囲まれている」
「そ、それがどうした?」
思いがけない俺の行動に、スキンヘッドの男が僅かに困惑している。
このまま畳み掛けるチャンスだ。
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