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「静紅ちゃん、ちょっといい?」
「……っ!!」
吉田たちが何故か朝から慌ただしく動いていた、今日。
ちょうど1人で部屋にいた静紅のところに、数週間振りに現れたのは紫折だった。
性懲りもなく現れた紫折に、静紅は部屋の隅まで後ずさった。
「え、あ…うん、結構傷つくんだけど……。この間のことは謝るからさ、何もしないし話し聞いてくれない?」
「………」
警戒しつつ対した。
「俺ね、言い伝えとか怪談・逸話とか調べるの好きでね。…最近ある地方の文献を読んだんだよ」
…いまいち何の話しをしたいのか分からない。しかし、凛とした目つきで真面目に語り出す紫折に静紅も聞く体勢を整えた。
紫折は胡座をかいた。
「越前の伝説なんだ。″八百比丘尼″っての」
「八百比丘尼?」
「うん、簡潔にいうと″人魚の肉を食べた女″の話だね。八百歳まで生きた人。」
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