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「忙しないね。俺もそろそろ動くよ、…じゃあね静紅ちゃん」
「あっ……はい」
何か言いたげな静紅だったが、紫折はさっと出て行った。…何故だか今生の別れのような気がしたのだ。
「静紅、今日は会合があるからお留守番しててね。…明日は花菖蒲を観にいこう、まだ咲いてると思う」
吉田は静紅の頭にぽんと手を置き、にっこりと微笑むと部屋を後にした。
…何故だろう。今日は嫌な予感がしてならない。吉田の顔も二度と見れないような気がする。
「私も行きますね。」
「桂さん、皆さんはどちらへ行かれたんですか?」
「んー…。静紅さんは留守を預かって頂ければ結構です。”必ず”帰ってきますよ」
答えなかった。
桂はそれ以上なにも言わずに部屋を出た。
静紅は、たまらず駆け出した。
「桂さん!」
「はい?」
「稔麿さんに約束は守って下さいと伝えてください!!」
「…えぇ、確かに」
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