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「ゆ、結城さん、近いです…」
額がくっつくくらい詰め寄る結城は、ごつっと額を当てた。
「や・す・は・る」
「あ…やす、泰遥さん…!」
「よく出来ました」
ちゅっと額に口付けして、顔を離した。
少し驚いた静紅だったが、やきもちをやいてる結城がどうにも可笑しくてくすくすと笑う。
「…なんだよ、噛み締めるように笑うな。恥ずかしいだろ」
「だって…ふふっ、…可愛くて」
結城は照れながら、静紅の両側の頬をむにっと摘まんだ。
いつにない穏やかな時間が過ぎる。
日もだいぶ傾いてきた。
………
………
「…母上、泰遥の隣いるのは結局誰だい?」
「母も聞いてないのです。誰でしょう?」
夕食の用意が出来たと呼びにきた母親と孝治は、部屋から応答がないので勝手に開けてみたところ、結城と静紅が寄り添って昼寝をしているところだった。
ちなみに、父親の部屋の時から静紅に一切目もくれないで寸劇(?)をしていた次第である。
「“静紅“という名とは聞いた。伴侶か?」
「まぁ、それはおめでたいですね」
「勝手に出ていって、勝手に伴侶をもらって…自由過ぎやしないか。許嫁はどうす、」
「黙れ!」
寝ていたと思われた結城が、かっと目を見開き手近にあった座布団を孝治目掛けて投げつけた。
静紅も皆の会話で目が覚めて、ふらっと起き上がった。
「許嫁…ですか」
「っ…、いないぞ、そんなもん」
結城は孝治を睨み付けた。
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