*Episode・13*

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「佳乃のことはもう良いのです。それより、静紅さん…でしたか、先程から蒼白になっていることに気を使ってあげてください」 「静紅……?」 隣で黙っていた静紅に目をやると、蒼白になりながら目に涙が溜まっていた。 「“結城さん“……軽薄過ぎます…」 「お前が泣くのかっ!?俺も後悔してる。…色々衝撃が強すぎるから、頼むからそんな目で見ないでくれ!」 涙腺を崩壊させつつ軽蔑の眼差しを送る静紅の両肩を掴んで頭を下げる結城だった。 その後、夕食を摂ってその晩は屋敷で寝たが、数日して出ていくことにした。 「あまりいい住まいは用意できなかったが、しばらくは我慢してくれ」 長屋の一角を借りることになった。狭いが寝泊まりする分には問題ないだろう。 「部屋はともかく、家財が上等過ぎるかと……」 「あぁ…あいつが送り込んできたやつだ。部屋と不釣り合いなんだよ、嫌がらせだな。畳抜けるぜ、ったく…」 ふかふかそうな布団に、桐箪笥、その他必要家財一式…一応部屋に収まっている。 「結城さん、ところで、」 「その、“結城さん“そろそろ止めてくれないか…。許してください」 あまり意識してはいなかった静紅はきょとんとした顔をしている。結城は項垂れていた。 「え、あ、そんなつもりはなかったのですが…。」 「静紅は俺がこの手で幸せにするから」 「は、い…?」 静紅の手を握りしめて、思いがけず求婚の台詞を口走った結城は固まった。
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