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結城は道場を見渡して今後に期待を膨らませていた。
──そんな、矢先の出来事だった。
深夜、寝付いたころにふと目を覚ました結城。外から燻ったような臭い鼻を掠めた。
「……?…っ!!まさかっ、」
飛び起きて戸を開けた。…真っ赤な炎が視界を覆った。
「道場が……燃えてる…」
今宵は、道場の離れで寝ていた。…どういうことか?何故、火があがっているのか。
とにかく火消しをしなくてはならない。火は勢いを増すばかりだった。
「静紅!起きろ!!……静紅?」
布団を剥いだが、隣で寝ていたはずの静紅の姿が見えない。
離れを飛び出した。
「こんな時にどこに行ったんだ。
…静紅!どこだ静紅!!」
「結城!よかった無事か。これは一体どういうことだ!?」
土方たちが駆けつけてきた。
「俺もわからねぇ。…静紅がいないんだ」
「何だと!?とにかく道場の火消しにかかるぞ」
騒ぎに駆けつけた者たちで、辺りは騒然としていた。
「あれは…」
「…え、結城さん」
「おい!止めろっ…」
結城が燃え盛る炎の中に見たのは、縁側にあった静紅の草履だった。
土方と沖田の制止を振り切り火の中に飛び込んだ。
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