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「静紅!!…ゴホッ」
火の手がまわる道場の中を探しまわる。息が苦しくなる。
こんな形でお前を失ってたまるか…
「やす……泰遥、さん…」
「静紅!」
勝手場から這い出るように静紅が現れた。結城は駆け寄り抱き上げる。
「どうしてこんなところにいるんだよ…滅茶苦茶心配したんだぞ」
「ごめんなさい…
お水が飲みたくて外に出たのですが、人の気配がして……ゴホッ、ケホッ。縁側が少し開いていたので、そこから入りました…それから急に火が上がりはじめて……」
結城は静紅をぎゅっと抱き締めた。
「俺を呼べよ。無茶するな…
さぁ、ここから出るぞ!時間が……っ」
──バキバキバキッ
「泰遥さん!!」
「土方副長!付近で捕縛しました。こいつが放火したやつです」
「本当か!?あとで締め上げる、監禁しておけ」
「はっははは!!…燃やしてやったぞ。試衛館は終わりだ」
「………っ」
土方と斎藤は絶句した。
この犯人とおぼしき奴は、唖然とする二人を見ると狂ったように声をあげて笑った。
「ざまぁね、」
「…ふざけんなよ、ここは試衛館じゃねぇ」
今度はこの男が唖然とする番だった。
火消しに奮闘する沖田も駆けつけた。火を着けた男…どうやら場所を間違えたらしい。
「なんだと…?土方たちが出入りしてるじゃねぇか。」
「お前、雇われか。俺たちがここを出入りしていたのは、ここ数日の話だ」
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