*Episode・3*

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「静紅さんにはそこの百合の着物が似合うのではないか?」 「斎藤さん、本気?僕はそっちの橙の奴がいいと思うけど」 「俺はこの藍染めが……」 「「「好きなのどうぞ」」」 「………」 これだけ各々の意見を言った後に振られても…静紅は困る。 「私は……」 「静紅ちゃん綺麗だよ!!」 「良い若草色だ」 静紅が選んだのは若草色に鈴蘭があしらわれた着物だった。 その場で着せてもらった。申し訳ないやら気恥ずかしさで複雑な顔をしている。…が、 「あー…!!」 突然静紅が声を上げた。帰路に向かっていた男3人も驚いて足を止めた。 「どうしたッ!?」 「ごめんなさい!!……結城さんの着流し、呉服屋に忘れてきました」 「なんだ…構わない、て」 「取りに戻ります!!」 結城が止める間もなく静紅は逆走していった。 「意外にお転婆なんですね…」 「ったく…迷子になる前に捕まえるぞ」
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