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「ここが医務室だ。監察方兼隊医の山崎烝がいる。
……顔が赤いが、熱でもあるのか?」
「!」
不意に斎藤が静紅の額に手を当てた。やはり少し冷たくて、静紅の少し火照った顔には心地好かった。
「ん、問題ない」
「……あ、ありが」
スパンッ
「貴様ら…他人の部屋の前で、いつまで逢い引きしとんねん!!用がないならさっさと帰れ!!」
いきなり障子が開き、関西訛りの男が何故か機嫌悪そうに現れた。もちろんこの男、山崎烝だ。
「……妙な言い回しをするな。
静紅さんが、指を切った。手当てしてほしいそうだ。
では私は失礼する」
「あ"ぁ?指切った?
そんなちっさいことで来たんか。……まぁえぇ、手当てするさかい、早う入り」
「………」
…気まずい……非常に気まずい。不機嫌な山崎の"俺の部屋"と称する医務室で二人きり。
何の話しをしようもない。
薬のにおいが部屋を満たしていた。
「…ほれ出来た、嬢ちゃん。
気をつけなあかんで。」
「ありがとうございます、お邪魔しました」
山崎さん苦手かも…と思う静紅だった。
山崎は独りになった部屋で布団に寝転んだ。頭を抱えながら静かにじたばたする。
「あー!!何か腹立つわー!!
他人の色恋沙汰なんか見てられるかァ!!!はっきりせぇっちゅうねん!!」
さすが監察方というのか、諸々の事情をいち早く察知した。というより一目瞭然ではあるが。
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