第十章 料理に潜むもの

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「なんだか今夜はやけに賑やかですね」  今夜のクラブの空気はいつもよりも来客数が多いように見えた。  季節的にはもう薄着では肌寒い気候だとういうのに、室内は半袖でもいいくらい熱気に包まれていた。 「今日はあいつの誕生日なんだよ」  溝口が腰に手を当てながら、客が騒ぎ立てている様子をため息混じりに眺めていた。 「あいつって?」 「奈智だよ。笹野奈智、高坂の……まぁ、遊び相手?」  溝口の目線の先に視線を這わせると、大勢の前ででシャンパンをあけたりしている。
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