第十章 料理に潜むもの

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「これねー上川さん直伝なんだって! 梨菜も食べなよ」 「う、うん」  もう一度、あのスープが食せるチャンスが来るとは思わなかった。  もしかしたらこれが最後の機会かもしれない。  これで、分からなければ……自分は―――。  嫌な汗を背中に感じながら、梨菜はスープを一口飲んだ。 「……っ!?」 「どう? 美味しいでしょ~あはは」  手元からスプーンを落としそうになって、梨菜は指先に慌てて力を入れた。 『これは何? もしかして、まさか…規制対象の食材?』  先日、高坂にもらった時は、味が若干薄めだったせいで舌が反応しなかったに違いない。  今までわからなかったたった一つのもの、それは明らかに梨菜の舌を刺激してその名前を告げた。
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