第十章 料理に潜むもの

14/16
前へ
/394ページ
次へ
「前から聞こうかと思ってたんだけど、お前……本当は何者?」 「え?」 「隠すなよ、お前のこと、上川さんや溝口さんもなんとなく疑ってる」  梨菜はその言葉に呆然となった。  自分の身元が割れてしまったのだろうか? と一瞬思ったが、そんな素振りは一度もも見せたつもりはない。 「上川さんのこと、あんまり嗅ぎ回らない方がいい……やばいバックがついてるって噂だから」  高坂の視線が剣呑に泳ぎだす。  こういう時は、自分の中にも迷いが生じている証拠だ。  梨菜はその崩れそうな心理状態を突くなら今しかないと思った。
/394ページ

最初のコメントを投稿しよう!

687人が本棚に入れています
本棚に追加