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「お前も黙れよ! 金がいるんだよ。だから昼間の経営だけじゃやっていけない」
梨菜はその言葉を聞いて、昼間の来客数と夜の来客数を比較した。
昼間の売上は夜に比べて赤字だったことは、梨菜もう薄々感づいていた。
「だからって、そうしてこんな事する必要があるの?」
「客寄せだよ……」
上川の表情は、もはや梨菜の知っているものではなかった。
異様な程に発汗し、目も虚ろで焦点も合っていないようだった。
明らかな薬物中毒者の症状に梨菜は硬直した。
「こいつをちょちょっと、メニューに混ぜたらクラブに来る客が一気に増えたんだ。
もともとの中毒者も中にはいたけど、中毒者は中毒者を呼ぶ」
「あなたって人は……」
純粋に料理を楽しみに来ている人を思うと、梨菜は憤りを隠せなかった。
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