13326人が本棚に入れています
本棚に追加
「嘘だぁ」
ドアが開けばここからでもちゃんと人の出入りは確認できる。
ドアが開く音がしなかったってことは、私にわからないように出てきたってことじゃない。
恨めしそうに社長を見ると、
「お前に嘘言って何の得になんだよ。ホラ貸せ、2人分煎淹れろ」
と横に立って私の分のコーヒーを掬った。
…あ。いい匂い。
そう思ったのは、コーヒーじゃなくて社長の香水。
普段の距離ならあまり感じない程度の匂いだけど、こうして近付くと凄くいい匂いがする。
キュン、とするような。
って。
何で私がキュンとしなきゃいけないんだろ。
そんな自問自答をしながら、ドリップされるコーヒーを眺めた。
.
最初のコメントを投稿しよう!