13326人が本棚に入れています
本棚に追加
「…何で謝る?」
見慣れない上目遣いの社長と目が合った。
「え…」
「俺が『社長』だから?」
ドキッとした。
なぜなら、そう言った社長の表情が、少し哀しそうに見えたから。
「…違い、ます」
反射的に、そう答えていた。
本当はそうなんだけど、それを言ったらこの人は傷ついてしまうんじゃないかと思った。
「こんなところで足を触られるなんて恥ずかしいから、です」
苦しい言い訳だったかもしれない。
でもそう言うと、社長はちょっとだけ目を丸くして、それからふっと笑った。
「はは。お前、男にも慣れてねーのな」
その後、私から絆創膏を催促すると、踵が当たる部分を保護するようにきれいに貼ってくれた。
「…ありがとうございました」
照れつつそう言うと、
「どういたしまして、お嬢様」
パンパンッと膝の汚れを払って、社長も照れ臭そうに立ち上がった。
.
最初のコメントを投稿しよう!