第一章 帰省

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20XX年7月28日 晴れ 私は前日の夜に電話で親にどやされたため、東京を離れ、電車で地元へと向かっている。 私はあの町には何もないため、個人的には大嫌い。 その事は家族も知っていて、両親を困らせているのも分かっている。 本当の事を言うと、別にあの町はそんなに嫌いではない。 でも“あいつ”がいたあの町には私は一分たりともいたくない。 あの町にいると“あの時の事”を思い出しそうで怖くなるからだ。 私が仕方なく実家へと戻った理由も、“あいつ”や“あの時の事”でとやかく言われるのが嫌だったから。 だから、母がそれを言う前に一度帰省する約束をしただけ。 実家に一番近い駅に着いたから電車を降り、駅を出ると、近くに母の姿があった。 私の存在に気付くと母は笑いながら近づいてきて 「那波!!やっと帰って来たね・・・全然帰ってこないから、心配したんだから」 母は笑顔でそういうと、私の荷物を半分持ってくれた。 「車で来てるけど、どっか寄りたいとこある?無いならまっすぐ帰るけど?」 私が「大丈夫」と告げると、母は変わらず笑顔で「分かりました」とこたえた。
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