キスより大切なこと

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一瞬にして全身から血の気が引く。 だめだ……絶対……俺のことキモイと思ってる……。 そりゃあ避けたくなるよな…… 嫌われた…… サクちゃんに嫌われた…… 「サク……ちゃん……」 「成瀬はさぁ!成瀬は……俺じゃなくて……俺の唇が好きなんでしょ……?昨日だって、俺じゃなくて俺の唇のこと考えてたんでしょ!?俺のことなんて見てくれない……いつまで経っても成瀬は……俺自体を見てくれない……もう……ツラいんだよ……成瀬の気持ちが分からなくて……ツラい」 サクちゃんの目からポロッと涙がこぼれて落ちた。 「サクちゃん……俺も、サクちゃんの気持ち、分かんないよ」 「成……瀬っ」 俺はサクちゃんの腕をつかむと、いつもキスしていた空き教室へと連れ込んだ。 「……サクちゃん、俺もサクちゃんの気持ち分かんないよ。だから……お互い今思ってることがあるならちゃんと話そう!?」 「成瀬……っ」 サクちゃんは両手で顔を覆うと、その場に崩れ落ちた。 「サクちゃん……俺……サクちゃんのことが好き……」 「……え?」 サクちゃんは顔をあげると涙を流しながら俺を見た。 「初めは本当に唇が好きだった。それが、いつの間にか、唇だけじゃなくて、サクちゃん自体が好きになってた……サクちゃんとキスしたいって甘えてたのも本当は、サクちゃんが好きだったから……昨日の……だって……サクちゃんのこと考えてた……サクちゃんの俺に見せる笑顔とか言葉とか思い出してた……思い出して……好きだよって……頭ん中で……つぶやいてた」 「成……瀬?」 「今はもう、唇がどうだとかどうでも良くて……そんなん関係ないくらい……サクちゃんが好き」 動機は不純。 きっかけは情けない理由。 どうしようもない俺。 カッコ悪い。 だけど、たとえ始まりが不純だとしても、 今はちゃんと想ってるよ。 サクちゃんのこと大事にしたいし、 泣かせたくない。 本当に本当に好きなんだ。 サクちゃんまるごと好きなんだ…… 頼むから 伝われ……!
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