(二)

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 オグノスは考えた。家を出たのは両親が寝静まってから。日付が変わるころだろう。それから闇雲に森をさまよい歩いたのが二時間ほどだとすると、夜明けまではやはりあと二時間程度だ。眠ってやり過ごせば短すぎる時間だ。幸い今は体も疲れている。安全な寝床さえ確保できれば、次に気づくころにはこの森にも木漏れ日が差しているに違いない。  そう考えて、オグノスは立ち上がった。それから辺りの雑草を踏みならしてみたものの、地面そのものが柔らかい感触がした。ぬかるんでいるのだろう。そんなところに寝転がるのは想像しただけで背筋が凍る。地面がだめなら木の上だ。オグノスはルーペをようやくリュックに滑り込ませ、両手をそっと暗闇の中へ差しだした。  何もない。いや、地面や草木が出す水気のせいか、まとわりつくような空気の存在を感じた。体をひねり後方も確認する。すると左手に細長いロープのようなものが当たった。ツタだ。ツタが垂れている。頭上に枝が張り出しているようだが、どの方向から伸びているのだろう?  いや。ここは森なのだ。木などどの方向へ行ったってあるに決まっている。森で木を探すーー馬鹿げた自分の考えに、オグノスは笑いがこみあげてくるのがわかった。一体、どれだけあせって正気を失っていたのだろう。
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