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寝不足のせいか、オグノスは返事をする気力もなかった。ただぼんやりと足元に広がる森を見下ろして、これまでの森とは違っているように思った。
森は、彼にとって今まで人の背景であった。地面も草も木も、ひっくるめて森だった。木は根も枝も葉もひっくるめて木だった。だけどそれは、たぶん間違っていた。
そんなことを考えている間にオグノスは大人たちに発見され、罵声と共に引きずり降ろされた。自分で降りられるとわめいたが、無視されてしまった。それから散々に怒られたが、父は自分がルーペを失くしたことはみんなに秘密にしていたようだった。ずるいと思ったが父の面目のため、オグノスは黙っていた。
それで気をよくしたのだろう、家に着いた父の一言目は「それはもうお前のもんだ」だった。
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