(二)

13/18
前へ
/39ページ
次へ
 別に善意でしていることではなかった。正直なところ、彼は宝物に飽きていた。なのに探したいという欲求だけが積り続け、息もできない。  彼は気道をふさぐものを振り払うようにして、旅を続けた。見慣れた人工の宝とは全く違ったなにか。それを求めて、オグノスはトカゲ人の住む白の砂漠に行った。揺らめく緑のオアシスは神秘的で淫靡であった。岩人の守る怒り山脈へ向かえば、昇る朝日は荘厳で、狂ったように猛る溶岩のうねりは、力の本当の姿を見せつけた。人の姿のどれほどちっぽけなものか。だが、それら自然でさえ、オグノスを満たすことはできなかった。  そこで目を向けたのが海だった。物言わぬ沈黙の支配する世界。そこでなら地上にはないなにかがあるような気がしていた。特に、アトランティカを呑んだといういわくつきの海域ならば。  なのにそこから引き揚げられたのは、岩の塊や金銀の財宝……人の手によって作られ、すでに散々に想いをかけられてきた、古の人々の抜け殻でしかなかった。オグノスがほしいものはそんなものではないのに。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加