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百年も昔のこと、このアトランティカ海域には牙型に突き出した大陸と無数の島々があったという。しかしある日大陸は水没、周りの小島も飲み込まれるようにして姿を消して行った。その様子はあの陸地からも見えたという。
鼓膜を揺るがす地鳴りと共に、悲しみを押し殺すように震えながら、まるで神聖な儀式のように。高波が起こるでもなく、空は今日のように穏やかに晴れていて、向かいの大陸が沈むーー。その姿はとても自然の仕業とは思えず、何者かの呪いであると伝わっていた。
何者か、この光の届かぬ暗闇の底に眠っているのだろうか。光も届かぬ、闇の中。
視線が再び水面へ吸い寄せられる。そうしていると、船の反対側から若い男たちの歓声が上がった。
「オグノスさあん、出ましたよ!」
ざぶざぶと、波間を割って何かを引き上げる音。それを背に、真黒に日焼けした若者が駆け寄ってくる。彼の瞳は日差し以上にきらきらと輝いて、シミのひとつも感じさせない。
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